■基本情報
・和名:ライチョウ(雷鳥、別名:ニホンライチョウ)
・英名:Rock Ptarmigan
・学名:Lagopus muta japonica(日本亜種)
・分類(科目):キジ目キジ科
■形態的特徴
・色や大きさ:全長は約37cmで、ハトよりも一回り大きくずんぐりとしたニワトリのような体型をしています。最大の生態的特徴は、年3回(春・夏・冬)の換羽によって全身の羽色が劇的に変化する点です。冬羽は天敵から身を隠すために積雪と同化する「純白色」になり、夏羽は高山の岩肌やハイマツに溶け込む「黒褐色と白のまだら模様(保護色)」に変わります。
・鳴き声:オスは繁殖期に「ガァー、ガァー」あるいは「ゲェー、ゲェー」と、カエルの鳴き声をもっと濁らせたような非常に低く太い声を出し、縄張りを主張します。メスは「クックッ」と優しく鳴きます。
・その他の特徴:オスの成鳥には、目の上に鮮やかな「赤色の肉冠(眉状の皮膚)」があり、興奮するとこれが大きく膨らみます。また、寒冷地への適応として、嘴(くちばし)の基部から足の指の先までがびっしりと厚い羽毛で覆われており、これが雪上を歩く際のかんじき(スノーシュー)の役割を果たします。
■分布地域(日本・海外)
・日本:本州(北アルプス、南アルプス、乗鞍岳、御嶽山など)の亜高山帯から高山帯にのみ「留鳥」として一年中生息しています。世界のライチョウ属の分布の中で「地球上で最も南(南限)」に位置する極めて貴重な隔離個体群(氷河時代の生き残り)です。
・海外:種全体としては、北極海沿岸、シベリア、アラスカ、カナダ、ヨーロッパのスカンジナビア半島やアルプス山脈などの寒冷な高緯度・高標高地域に広く分布しています。
■生態・行動
・生息環境と食性:森林限界を超えた標高2,400m以上の、ハイマツ(這松)や高山植物が激しく繁茂する岩礫地(ガレ場)を主な生活圏としています。ほぼ完全な植物食性で、ハイマツの冬芽や葉、コマクサやガンコウランなどの高山植物の芽、実、葉、花を好んで食べます。
・名前の由来と行動:天敵である猛禽類(オオタカやハヤブサ、イヌワシなど)の襲撃を避けるため、青空の広がる快晴の日にはハイマツの茂みの奥にじっと身を潜め、猛禽類が飛行しにくい「雷が鳴るような悪天候(霧、雨、吹雪)」の時に活発に動き回って採食を行う特異な習性を持っています。これが「雷鳥」という和名の由来になりました。
■その他の特筆すべき特徴
・神の使いと国の特別天然記念物:日本では古くから修験道や山岳信仰の対象(立山など)として「神の使者」と崇められ、人が危害を加えなかったため、欧米の野生ライチョウに比べて人に対する警戒心が極めて薄いことで知られています。登山者が近づいても逃げずに足元を歩く姿がよく見られます。富山県・長野県・岐阜県の「県鳥」に指定されています。
・絶滅の危機と保護活動:近年の地球温暖化による高山環境の変化、ニホンジカによる高山植物の食害、さらには本来高山にいないはずのテン、キツネ、カラスといった中大型の天敵が登山者のゴミや温暖化に伴って山頂部に侵入したことにより、雛の捕食被害が深刻化しています。日本国内の生息数は約1,500〜2,000羽にまで激減しており、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠB類(EN)」、および国の「特別天然記念物」に指定されています。現在は、ケージを使った雛の保護や、動物園(富山市ファミリーパーク等)での人工繁殖・野生復帰計画などの懸命な保全活動が国を挙げて進められています。




