■基本情報
- 和名: イスカ(交喙)
- 英名: Red Crossbill
- 学名: Loxia curvirostra
- 分類: スズメ目 アトリ科 イスカ属
■形態的特徴
- 色や大きさ: 全長約17cmとスズメより一回り大きく、カワラヒワやイカルに近いがっしりとしたずんぐり体型の小鳥です。オスとメスで羽色が全く異なり、成鳥のオスは翼と尾羽が黒褐色であるのを除き、全身がレンガ色のような深い暗赤色をしています。一方、メスは赤みが一切なく、全体がオリーブ色(灰色がかった黄緑色)をした落ち着いた色合いをしています。
- 鳴き声: 飛ぶときや群れで移動するときに「キョッ、キョッ」「チョッ、チョッ」あるいは「ピッ、ピッ」と、硬く歯切れの良い金属的な声で賑やかに鳴き交わします。求愛期や繁殖期には、木の梢(てっぺん)などで「チュッチチュイチーン」「チュチュピーピーピー」と様々な声を織り交ぜて美しくさえずります。
- その他の特徴: 最大の特徴は、名前の由来(交喙 = 交差したくちばし)でもある、上下のくちばしの先端が左右に互い違いに交差している独特な形状(食い違い)です。上くちばしは下向きに、下くちばしは上向きにそれぞれ湾曲し、先端がかみ合わずにねじれています。
■分布地域(日本・海外)
- 日本: 主に「冬鳥」として、秋から冬にかけて全国の針葉樹林に渡来します。アトリなどと同様に、年によって渡来する個体数に非常に激しい変動があり、大当たりの年(大渡来の年)には各地の公園などでも見られますが、飛来数が極めて少ない年もあります。北海道や本州の山岳地帯(長野県など)では、ごく少数が年間を通じて留まる「留鳥」として繁殖していることも確認されています。
- 海外: ユーラシア大陸および北アメリカ大陸の亜寒帯から温帯にかけての針葉樹林帯にきわめて広く分布しています。
■生態・行動
主に山地の松林、カラマツ林、エゾマツ林などの針葉樹林に生息します。食性はきわめて偏っており、マツやカラマツなどの「松ぼっくり(球果)」の中に詰まっている種子が主食です。独特な交差したくちばしを少し開き加減にして松ぼっくりの笠の隙間に差し込み、くちばしを噛み合わせることで笠をこじ開け、中の種子を器用に長い舌で絡め取って食べます。針葉樹の実りを求めて神出鬼没に各地を移動するため、特定の場所に定住しない流浪の生活を送っています。
■その他の特筆すべき特徴
そのユニークなくちばしの形から、日本では物事が食い違ってうまくいかないことを「イスカの嘴(はし)の食い違い」と呼ぶ慣用句の語源になりました。ヨーロッパのキリスト教の伝説では、キリストが十字架に磔にされた際、その手足に打ち付けられた釘をこの鳥がくちばしで一生懸命に引き抜こうとしたため、その血に染まって体が赤くなり、くちばしが曲がってしまったという神聖な逸話が残されています。また、主食である松ぼっくりの豊凶に自らの繁殖スケジュールを完全に依存させているため、鳥類としては大変珍しく、エサ(松の実)さえ豊富であれば、冬(11月〜4月頃)であっても季節を問わずいつでも営巣・子育てを行うという非常に特殊な生態を持っています。


