■基本情報
・和名:ホシガラス(星鴉、別名:ダケガラス)
・英名:Spotted Nutcracker / Eurasian Nutcracker
・学名:Nucifraga caryocatactes
・分類(科目):スズメ目カラス科
■形態的特徴
・色や大きさ:全長は約35cm、体重は約170g〜200gで、カケスやハトとほぼ同じくらいの大きさの中型の鳥です。全身は艶のない濃いチョコレート色(暗褐色)をしており、頭頂部を除く顔から胴体にかけて白い斑点が星のようにびっしりと散りばめられています。
・鳴き声:「ガァー、ガァー」あるいは「ジャージャー」と、カラスの仲間らしく非常にしわがれた大きなダミ声を出して鳴きます。
・その他の特徴:名前の由来通り、白斑が並ぶ羽色が「満天の星空」のように見えるのが最大の特徴です。嘴(くちばし)は黒くて太く、まっすぐピンと尖っており、硬い松の実を容易に噛み砕いたり殻を割ったりできるほど頑丈な構造をしています。飛翔時には、下尾筒(お尻のあたり)と尾羽の先端の純白色が鮮やかに目立ちます。
■分布地域(日本・海外)
・日本:留鳥(または漂鳥)として、北海道、本州、四国の亜高山帯から高山帯(標高の高い針葉樹林やハイマツ帯)に一年中広く生息しています。九州(祖母傾山系など)でも少数が記録されています。冬期になると、寒さや雪を避けるためにやや標高の低い山地や山麓の林、稀に低地の森林へ下りてくる垂直移動を行います。
・海外:スカンジナビア半島からヨーロッパ東部、シベリア、ロシア極東、中国、朝鮮半島、台湾など、ユーラシア大陸のタイガ(寒冷な針葉樹林帯)を中心に広く分布しています。
■生態・行動
・生息環境と食性:ダケカンバ帯よりも標高の高い、コメツガ、シラビソ、ハイマツなどが生い茂る高山環境を主な生活圏としています。雑食性で、夏場(5月〜9月頃)には昆虫類、クモ類、トカゲ、鳥の卵や雛などを活発に捕食しますが、秋から冬にかけてはハイマツやゴヨウマツ、チョウセンゴヨウなどのマツ属の種子(松の実)を主食とします。
・驚異的な貯食行動:秋になると、熟したハイマツの球果(まつぼっくり)を丸ごと木からもぎ取り、頑丈なくちばしで壊して中の種子を取り出します。これらを喉にある専用の袋(喉袋)に一時的に大量に溜め込み、あちこちの岩の隙間や地中、枯れ木のくぼみなどにせっせと隠す「貯食(ちょしょく)」の習性があります。1羽が1シーズンに隠す種子の数は数万個に及び、その場所を正確に記憶して冬や早春の貴重な食料として掘り出して食べます。
■その他の特筆すべき特徴
・高山の環境を守る森の達人:ホシガラスが貯食として地中に隠したハイマツの種子のうち、食べ残されたり忘れられたりしたものが春に発芽します。ハイマツは自力で種子を遠くへ飛ばす仕組みを持たないため、高山帯におけるハイマツ群落の拡大や山崩れ跡の「森の再生」は、ほぼすべてホシガラスの貯食行動によって担われています。このため、高山の生態系を維持する上で欠かせない「森づくりの達人」と呼ばれています。
・非常に早い繁殖期:他の多くの野鳥よりも圧倒的に繁殖のスタートが早く、まだ山に深い雪が残る極寒の3月頃から針葉樹の枝の上に小枝や苔を集めて頑丈な巣を作り始めます。この極寒期の子育てを可能にしているのが、前年の秋に周囲の地中に大量に隠しておいたハイマツの種子(貯食)です。古くから登山者の間では「岳鴉(だけがらす)」の愛称で親しまれており、山小屋の周辺や登山道沿いでも比較的よく観察されます。


