■基本情報
- 和名: エゾビタキ(蝦夷鶲)
- 英名: Grey-streaked Flycatcher
- 学名: Muscicapa griseisticta
- 分類: スズメ目 ヒタキ科 ヒタキ属
■形態的特徴
- 色や大きさ: 全長約14.5cmとスズメとほぼ同等の大きさを持つ、スマートな体型の小鳥です。背中や翼の上面はくすんだ灰褐色(ダークグレー)をしており、お腹側は純白です。
- 鳴き声: 渡りの時期(日本飛来時)はほとんど鳴かず非常に物静かですが、稀に「ツィー」「チッ」と細くかすれた小さな声で短く鳴きます。繁殖地でのさえずりは「チチチチッ」「ツィツィツィ」と小さく細い声で静かに歌います。
- その他の特徴: 最大の特徴は、白い胸から脇腹にかけて、黒褐色の明瞭な縦縞模様(縦斑)がびっしりと並んでいる点です。これにより、秋に同時によく見られる近縁種のコサメビタキ(胸が無地)やサメビタキ(胸の縞がぼやけて暗い)から識別することができます。目は丸くて真っ黒で、目の周りには細く白いアイリングがあります。くちばしは黒く、基部がわずかに黄色みを帯びています。
■分布地域(日本・海外)
- 日本: 春(5月頃)と秋(9月〜10月頃)の渡りの季節に、日本列島を通過する「旅鳥」として全国に飛来します。特に秋の渡りの時期には個体数が多くなり、平地の公園、市街地の庭園、河川敷の林などでごく普通に観察することができます。名前に「エゾ(蝦夷・北海道)」とありますが、日本国内では繁殖せず、通過するだけです。
- 海外: カムチャツカ半島、サハリン、千島列島、ロシア極東部(沿海地方など)の限られた地域で広く繁殖します。冬になると、太平洋を南下する大規模な渡りを行い、フィリピン、インドネシア(スラウェシ島やモルッカ諸島など)、ニューギニア島へと向かって渡り、そこで越冬します。
■生態・行動
明るい森林の縁、農耕地、都市部の公園、街路樹、果樹園などに生息します。ヒタキ類特有の「フライングキャッチ(飛翔捕食)」という大変巧みな狩りを行います。見晴らしの良い木の枯れ枝の先端や杭の上などに好んでポツンととまり、周囲をじっと見渡します。空中を飛んでいるハエ、蚊、ハチ、カメムシなどの昆虫を発見すると、矢のように飛び立って空中で一瞬にして捕らえ、また元の同じ枝へと戻ってくるという、規則正しいユーモラスな行動を繰り返します。秋の渡りの時期には、ミズキやコブシなどの樹木に実る小さな果実(ベリー類)も好んで食べます。
■その他の特筆すべき特徴
春の渡りは日本海の離島などを一瞬で通過するため目立ちませんが、秋(特に9月下旬から10月中旬)になると、全国各地の身近な都市公園の木々に一斉に姿を現します。同じヒタキ属のサメビタキ、コサメビタキと合わせて「サメ類(サメチビタキ類)」と野鳥ファンの間で総称され、秋の渡りのシーズン到来を告げるアイドル的な存在として親しまれています。人間に対する警戒心が比較的薄く、公園の遊歩道沿いの枝などにも平気でとまるため、じっとしていれば間近でじっくりと観察や撮影を楽しませてくれる愛らしい鳥です。


