■基本情報
・和名:シロエリオオハム(白襟大波武)
・英名:Pacific Loon
・学名:Gavia pacifica
・分類(科目):アビ目アビ科
■形態的特徴
・色や大きさ:全長は約65cmで、カラスよりも一回り大きな海鳥です。夏羽は頭部から後頸が美しい銀灰色(灰色)になり、前頸に紫色光沢のある黒い斑が現れ、背中には白い格子状の角斑が美しく並びます。冬羽は一転して上面が黒褐色、お腹などの下面が純白色というシンプルな配色に変わります。
・鳴き声:基本的には静かですが、短く「アァー、アァー」と鳴くほか、繁殖期や洋上では「グァーン」や「グォーィ」といった、少し詰まったような低い声を響かせます。
・その他の特徴:嘴(くちばし)は鉛色でまっすぐ尖っています。冬羽の際、喉(のど)のあたりに細い首輪状の黒い線(チンストラップ)が見られる個体が多いです。よく似たオオハムと異なり、水面に浮いているときに腰の後方の白い斑が露出しないため、遠方からの識別ポイントになります。
■分布地域(日本・海外)
・日本:冬鳥として、秋(11月頃)から春(4月頃)にかけて主に関東以北の太平洋沿岸や日本海、内湾、河口などの海上に多く渡来して越冬します。日本国内で観察されるアビ類の多くは本種とされています。
・海外:シベリア東北部やアラスカ、カナダ北部の広大な北極圏(ツンドラ地帯)の湖沼や池で繁殖し、冬期は南下して日本周辺のほか、北アメリカ西海岸などの温帯域の海原へ渡って越冬します。
■生態・行動
ほぼ一生の大半を海上(外洋や沿岸)で過ごす完全な海洋性の鳥です。極めて優れた潜水能力を持っており、みずかきが大きく発達した脚のみを使って水中を自由自在に泳ぎ回ります。首を水中に差し入れて獲物を探し、体を低くしてから一気に深く潜水し、主食であるイカナゴなどの小魚類や甲殻類を捕食します。骨密度が高く体が重いため、水面から飛び立つ際は足で水面を何度も激しく蹴って長い距離を滑走する「助走」を必要とします。陸上では自立して歩くことができず、腹ばいで這うようにしか移動できません。
■その他の特筆すべき特徴
かつて瀬戸内海(広島県呉市周辺など)で行われていた伝統的な「アビ漁(鳥持網代漁)」において、タイなどの大型魚を追い込んでくれる有益な鳥(現地でアビと呼ばれていたものの主力を占める)として古くから漁師たちに大切にされ、広島県の「県鳥」にも指定されています。しかし、近年の海洋環境の変化や漁網への混獲、タンカー事故による重油流出汚染などの影響を受け、日本への渡来数は各地で著しく激減しています。多くの自治体のレッドデータブックで絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されており、海洋環境の保全が叫ばれています。


