■基本情報
・和名:ヤブサメ(藪雨、藪鮫)
・英名:Asian Stubtail
・学名:Urosphena squameiceps
・分類(科目):スズメ目ウグイス科
■形態的特徴
・色や大きさ:全長は約10.5cm、体重は約9gで、日本に生息する鳥類の中で最も小さな鳥の一つです。体の上面は暗いオリーブ褐色(茶褐色)、下面は淡褐色から汚白色をしています。
・鳴き声:さえずりは「シシシシシ…」あるいは「シィシィシィ…」と、虫の音(セミやキリギリスの仲間)にそっくりな極めて高い金属的な声を、次第に高く強く響かせます。周波数が約8〜10kHzと極めて高いため、高音が聞き取りにくくなった年齢の人には一切聞こえなくなることで非常に有名です。地鳴きは「チャッ、チャッ」と短く鳴きます。
・その他の特徴:尾羽が極端に短いため、全体的にずんぐりとした2頭身のような可愛らしいシルエットをしています。目の上には白くて太く明瞭な眉斑(びはん)があり、それを引き締めるように太い黒褐色の過眼線が走っています。止まった時には頭から背、尾羽までが水平に近い姿勢になることが多いです。
■分布地域(日本・海外)
・日本:夏鳥として、春(4月頃)に北海道、本州、四国、九州、南西諸島の屋久島、およびいくつかの離島(対馬や佐渡など)の森林へ広く飛来して繁殖します。秋(9月〜10月頃)になると南へ渡っていきます。
・海外:ロシア極東(沿海州)、中国東北部、朝鮮半島などで繁殖し、冬期は中国南部や東南アジア(タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオスなど)へ渡って越冬します。
■生態・行動
主に平地から山地の、特にササ(笹原)や下草が激しく繁茂した薄暗い落葉広葉樹林の林床(地面)や、渓流沿いの湿り気のある藪の中に生息します。名前の通り徹底的に「藪」を好む引っ込み思案な性質で、開けた場所には滅多に出てきません。藪の中を、体を左右にせわしなく振りながらネズミのように素早く活発に動き回ったり、地上を跳ね歩いたりして生活します。食性は主に昆虫食で、植物や落ち葉の隙間にいるアオムシ、小さなバッタ、羽虫、クモなどを捕食します。
■その他の特筆すべき特徴
和名の「ヤブサメ」の由来には諸説あり、「シシシシ…」というさえずりの響きが、静かな笹藪にザーザーと降り注ぐ「小雨の音(藪雨)」のようであることに由来するという詩的な説が有力です。また、藪に住む小さな鳥という意味の古語とする説もあります。馬の上から矢を射る「流鏑馬(やぶさめ)」とは一切関係がありません。繁殖の際は、斜面の土手や倒木の下、樹木の根元の隙間といった地上の隠れた場所に、苔や枯葉を集めてお椀型の巣を巧妙に作り上げます。一夫一妻制が基本ですが、子育ての後半に隣の縄張りのオスがなぜか手伝いにやってきて居候するという、極めて奇妙な社会生態を持つことでも知られています。


