■基本情報
- 和名: オバシギ(尾羽鴫)
- 英名: Great Knot
- 学名: Calidris tenuirostris
- 分類: チドリ目 シギ科 オバシギ属
■形態的特徴
- 色や大きさ: 全長約26〜28cm、翼開長約56〜66cmと、日本で見られるシギ・チドリ類(シギチ)の中では中型からやや大型の部類に入り、キジバトやムクドリに近いサイズ感です。季節によって羽色が大きく異なり、春から夏の繁殖期(夏羽)になると、頭部から胸にかけて濃い黒褐色の斑紋がびっしりと並び、まるで真っ黒な胸当てをしているように見えます。さらに、背中や肩の羽には鮮やかなレンガ色(赤褐色)の斑が混ざり、非常に華やかになります。一方、秋から冬(冬羽)は全体が均一な淡い灰褐色(グレー調)となり、お腹側は純白になります。
- 鳴き声: 渡りの時期(日本飛来時)は比較的物静かですが、飛び立つ時や飛行中に「キッ、キッ」あるいは「ニュゥ、ニュゥ」といった、少し鼻にかかったような低い声で短く鳴きます。
- その他の特徴: くちばしは真っ直ぐで頑丈そうに太く、長さは頭部の約1.5倍あります。脚は短めで、くすんだ緑灰色をしています。よく似た近縁種の「コオバシギ」と比べて一回り大きく、くちばしが長くて先端がわずかに下側に湾曲して見える点が識別ポイントです。また、飛んだときには腰(背中の下部)に細かい波状の斑紋(淡灰色)があるのが見えます。
■分布地域(日本・海外)
- 日本: 主に春(4月〜5月)と秋(8月〜10月)の渡りの季節に、日本列島に立ち寄る「旅鳥」として全国の干潟や河口に渡来します。特に秋の渡りは成鳥が先に出発するため、8月頃から見姿を確認できます。環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に指定されている貴重な鳥です。
- 海外: シベリア東部やアラスカなどの北極圏に近い亜寒帯の非常に限られた高山帯(ツンドラ地帯)で繁殖します。冬になると、東アジアの沿岸部を南下する大規模な渡りを行い、オーストラリア、東南アジア、インドなどの熱帯地域の沿岸部へと向かって渡り、そこで越冬します。
■生態・行動
主に広大で豊かな干潟、河口、海岸の砂浜、河川敷の泥地などに生息します。数羽から数十羽、時にはそれ以上のまとまった群れを形成し、よくコオバシギやオオソリハシシギなど他のシギ類と混ざって行動します。食性は動物食で、干潟の泥の上をせわしなく歩き回りながら、長いくちばしを泥の中に深く何度も差し込み、中に潜む小型の貝類(アサリなどの二枚貝)、甲殻類(カニやエビ)、ゴカイなどを捕食します。特に小さな貝を殻ごと丸呑みにし、頑丈な砂嚢(砂ずり)で殻を強力にすり潰して消化する特異な生態を持っています。
■その他の特筆すべき特徴
和名の「オバ(尾羽)」は、尾羽の模様が美しいこと、あるいは一回り小さいコオバシギ(小尾羽鴫)に対して大きいことから名付けられました。地球規模の壮大な渡りを行う鳥として知られていますが、近年は渡りの重要な中継地である東アジア沿岸(特に中国や韓国の黄海沿岸、日本の干潟)の埋め立てや開発によって、世界的に個体数が急速に激減しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでも絶滅危惧IB類(EN)に指定され、国際的な保護が強く叫ばれています。日本の干潟に数日〜数週間滞在してエネルギー(脂肪)を極限まで蓄え、再び数千キロ先の目的地へと一気に海を渡っていく、驚異的な生命力を持った渡り鳥です。




