■基本情報
- 和名:オオヨシゴイ(大葦五位)
- 英名:Schrenck’s Bittern(ロシアの動物学者レオポルド・フォン・シュレンクへの献名)
- 学名:Ixobrychus eurhythmus
- 分類(科目):ペリカン目サギ科ヨシゴイ属
■形態的特徴
- 色や大きさ:全長は約33cm〜40cm、翼開長は約55cm〜60cm。鳩より一回り大きい程度の小型のサギです。性的二型(オスとメスで見た目が異なること)が非常に明瞭です。
- 成鳥オス:頭頂から後頭が青みがかった黒色。背面は美しい光沢のある濃いチョコレート色(栗褐色)で、お腹側は淡いバフ色(黄白色)をしています。喉から胸にかけて中央に1本の暗褐色の縦線が走ります。
- 成鳥メス:背面が暗褐色で、体全体に星を散りばめたような白い斑点(星斑)が無数にあります。お腹側には数補の暗褐色の縦斑があり、オスに比べて複雑な保護色になっています。
- 共通:虹彩(目の色)と足は鮮やかな黄色です。クチバシは上側が黒っぽく、下側は黄色みを帯びています。
- 鳴き声:非繁殖期はほとんど鳴きませんが、繁殖期(5月〜7月頃)になると、主に夜間や薄明薄暮時に「オーッ、オーッ」または「ウー、ウー」「プー、プー」といった低くこもった声を、数秒間隔で規則正しく繰り返し鳴きます。この声は、ヨシ原の奥から響くため音源の特定が困難です。
- その他の特徴:足の指が非常に長く、ヨシの茎を巧みに掴んで素早く移動できます。危険を感じると、クチバシを真上に向けて体全体を細く伸ばし、周囲のヨシの茎に完全に同化する「擬態(ぎたい)」のポーズをとります。
■分布地域(日本・海外)
- 日本:夏鳥(あるいは稀な旅鳥)として、主に本州の中部以北(東北地方や信州の高原など)や北海道に飛来して繁殖します。西日本や南西諸島では、渡りの時期に通過する姿がわずかに確認されるほか、温暖な地域でごく稀に越冬する例(冬鳥)も報告されています。
- 海外:繁殖地は東アジアに限定されており、ロシア極東部(アムール・ウスリー地方)、中国東北部、朝鮮半島などです。冬期は南下し、フィリピン、マレー半島、インドネシア、ボルネオ島などの東南アジアへ渡って越冬します。
■生態:行動
- 生息環境:平地から山地の湖沼、河川敷、湿地、放棄水田、あるいはマコモやヨシが密生する湿地帯に生息します。特に、ある程度の広さと身を隠せる茂みがある環境を好みます。
- 日中の行動:強い夜行性・隠蔽性(いんぺいせい)を持っています。日中はヨシ原の最も深い場所に潜んでじっとしており、人が近づいても飛び立たず、歩いて茂みの奥へ逃げるため、姿を見ることは極めて困難です。
- 採餌(エサ取り):単独で行動し、ヨシの根元や水際を忍び足で歩きながら、待ち伏せ型で狩りをします。主な捕食対象は、小型の淡水魚、カエルやタダミなどの両生類、サワガニなどの甲殻類、トンボのヤゴやミズカマキリといった水生昆虫、バッタなど多岐にわたります。
- 繁殖:ヨシ原の地上から数十センチ上がったヨシの茎や、水辺の低い低木の枝に、枯れ草やヨシの葉を粗雑に積み重ねて皿状の巣を作ります。1腹の産卵数は3〜5個で、白く丸みを帯びた卵を産みます。抱卵や育雛は雌雄が協力して行います。
■その他の特筆すべき特徴
- 絶滅の危機:日本の環境省レッドリストでは「絶滅危惧IB類(EN)」に指定されています。これは、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種であることを意味します。
- 減少の理由:全国的な河川改修、湿地帯の開発、河口の護岸工事などにより、本種が繁殖・採餌できる広大なヨシ原が激減したことが最大の原因です。さらに、減反政策に伴う休耕田の乾田化(乾燥して草地になること)も、エサ場を奪う要因となっています。
- バードウォッチングでの位置づけ:日本に飛来するサギ類の中でもトップクラスに出会うのが難しい「珍鳥」として知られています。姿を見せるのは、渡りの時期に開けた場所に迷い込んだときや、繁殖期に稀にヨシ原の上を低空飛行(羽をパタパタと羽ばたかせたあと滑空する独特の飛び方)するときに限られます。




