■基本情報
- 和名: エゾムシクイ(蝦夷虫喰)
- 英名: Sakhalin Leaf Warbler
- 学名: Phylloscopus borealoides
- 分類: スズメ目 メボソムシクイ科 メボソムシクイ属
■形態的特徴
- 色や大きさ: 全長約11.5cmと、スズメよりも一回り小さい極小の鳥です。背中や翼の上面は暗いオリーブ褐色をしています。他の多くのムシクイ類(メボソムシクイなど)と比べて、背中や頭部の羽毛に緑色みがほとんどなく、より暗く茶色(灰色)っぽい色合いをしているのが特徴です。お腹側はくすんだ灰白色をしています。
- 鳴き声: 「ヒーツーキー」「ヒーツーチー」と、金属的で非常に高音の澄んだ声で、3音ずつ区切るようにしてリズミカルにさえずります。この声は山林の奥深くで非常によく通り、一度聞くと忘れられない特徴を持っています。地鳴きは「ピッ」または「プィッ」と短く鳴きます。
- その他の特徴: 目の上を通る薄黄白色の眉斑(びはん)がはっきりと通っていますが、他のムシクイ類に比べて目元を横切る黒い線(過眼線)が特に濃く太いため、顔立ちがやや険しくシャープに見えます。羽の横にある白い筋(翼帯)は、大雨覆の先端に1本だけうっすらと確認できます。下くちばしは全体がくすんだ黄色〜オレンジ色をしています。
■分布地域(日本・海外)
- 日本: 主に「夏鳥」として、春(4月〜5月頃)に繁殖のために全国の山地に渡来します。本州中部以北の亜高山帯から北海道(蝦夷)にかけての針葉樹林や混合林で広く繁殖し、秋(9月〜10月頃)になると、冬を越すために南西諸島や東南アジアへと南下します。
- 海外: サハリン(樺太)や千島列島南部、ロシア極東部の一部で繁殖し、冬になると東南アジアの温暖な地域へ渡って越冬します。
■生態・行動
主に標高の高い山地の針葉樹林、ブナやミズナラなどの深い落葉広葉樹林に生息します。ウグイスや他のムシクイ類と同様に、非常にすばしっこく活発な鳥です。うっそうと茂った樹木の中層から下層の枝先、または藪のなかをチョコマカと激しく動き回りながら、葉の裏に潜む小さな昆虫、クモ、イモムシなどを捕食します。警戒心が強く、さえずり声は頻繁に聞こえるものの、常に葉の生い茂った茂みの中に隠れていることが多いため、姿をはっきりと観察するのは非常に難しい鳥です。
■その他の特筆すべき特徴
姿形が日本のウグイス科やメボソムシクイ科(ムシクイ類)の中で最も生き写しと言われるほど、他の種類(センダイムシクイ、メボソムシクイ、コムシクイなど)と酷似しており、見た目だけで100%特定するのは専門家でも至難の業とされる最難関のグループです。しかし、本種は「ヒーツーキー」という極めて独特な美しいさえずり(声)を持つため、春から夏の繁殖期であれば、その声によって誰でも確実に他のムシクイ類と識別することができます。また、他のムシクイ類が樹木の上層部(高い梢)を好むのに対し、エゾムシクイは比較的低い藪や沢沿いの暗い環境を好むという生態的な違いもあります。


