■基本情報
・和名:ムギマキ(麦播)
・英名:Mugimaki Flycatcher
・学名:Ficedula mugimaki
・分類(科目):スズメ目ヒタキ科
■形態的特徴
・色や大きさ:全長は約13cmで、スズメよりも一回り小さな小鳥です。オスの成鳥は頭部から背面、翼、尾羽が艶のある黒色(あるいは濃い暗灰色)をしており、喉から胸、脇腹にかけてが鮮やかな「橙色(オレンジ色)」をしています。お腹の中央から下側は純白色です。メスは全体的にオリーブ褐色で、オスのような派手な黒やオレンジの色彩はなく、胸が淡い黄褐色を帯びる程度です。
・鳴き声:地鳴きは「ジリリ、ジリリ」や「チッチッ」と、キビタキやコサメビタキに似たやや濁った小さな声を出します。日本国内ではほとんどさえずりませんが、繁殖地では澄んだ美しい声でさえずります。
・その他の特徴:オスの成鳥は、目の後ろ(後頭部の側面のやや上)に短い「白い斑紋(眉斑状の斑)」があるのが最大の特徴です。また、翼(雨覆や三列風切の基部)にも明瞭な白い斑紋があります。
■分布地域(日本・海外)
・日本:主に「旅鳥」として、春(5月頃)と秋(10月〜11月頃)の渡りの時期に全国各地を通過します。特に秋の渡りの時期には、日本海側の島々(舳倉島や対馬など)や西日本、南西諸島に多く飛来し、都市公園の緑地などでも稀に観察されます。日本国内での繁殖記録はありません。
・海外:シベリア中・東部、ロシア極東、サハリンなどで夏鳥として広く繁殖し、冬期は東南アジア(マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島など)や中国南部へと渡って越冬します。
■生態・行動
平地から低山の明るい森林、混交林、林縁、渡りの時期には都会の大きな公園の樹木などに生息します。基本的には単独または数羽の小さなグループで行動します。他のヒタキ類と同様に、樹上の中層から下層の枝に留まって周囲を見回し、飛んでいる昆虫を見つけると飛び立って空中で捕らえるフライングキャッチ(空中捕食)を行います。主食は昆虫類やクモ類ですが、秋の渡りの時期にはカラスザンショウ、ミズキ、マユミなどの草木の実を大好物として好んで食べます。
■その他の特筆すべき特徴
和名の「ムギマキ」は、農家が秋の「麦を蒔く(むぎまき)」時期に日本国内をちょうど通過していくことに由来して名付けられたという、日本の季節感に深く根ざした歴史があります。日本を通過する期間が非常に短く、キビタキやジョウビタキに比べると出会う機会が大幅に少ないため、バードウォッチャーやカメラマンの間で「秋の渡りの珍しい人気鳥」として絶大な人気を誇ります。秋の公園にマユミやカラスザンショウの実が実ると、それを目当てに突如として現れる習性があります。



