■基本情報
- 和名: アカハシハジロ(赤嘴羽白)
- 英名: Red-crested Pochard
- 学名: Netta rufina
- 分類: カモ目 カモ科 アカハシハジロ属
■形態的特徴
- 色や大きさ: 全長約50〜55cm、翼開長約85〜92cmと、日本でよく見られるマガモよりわずかに小さく、ホシハジロより一回り大きな中型のカモです。オスとメスで全く異なる派手な色合いをしています。成鳥のオスは、大きな丸い頭部が鮮やかな赤橙色(オレンジ色)をしており、頸、胸、お腹、およびお尻(尾筒)が光沢のある美しい藍黒色をしています。脇(体の側面)は大きな純白の斑になっており、黒い体とのコントラストが鮮やかです。一方、メスは頭頂部が暗褐色で、顔の下半分(頬から喉)が淡い灰白色〜青白色をしており、体全体は均一な薄い灰褐色をした落ち着いた色合いをしています。
- 鳴き声: 繁殖期や求愛の際、オスは「ピィィィッ」「ピィッ」と高くて鋭い口笛のような声を出し、メスは「ギィ」「クァクァ」といったカモ類特有の少し濁った低い声で鳴きます。日本では非繁殖期(冬)に渡来するため、比較的物静かで大きな声で鳴くことは稀です。
- その他の特徴: オスの最大の特徴は、名前の由来にもなっている珊瑚(サンゴ)のように鮮やかで艶のある真っ赤なくちばしです。頭部の羽毛がふんわりと逆立って「リーゼント」や「冠羽」のように大きく丸く膨らんで見えるため、他のカモ類とは絶対に見間違えない強烈なシルエットをしています。雌雄共通の特徴として、飛んだときに翼の上面(風切羽)に太く長い白帯(翼鏡)がはっきりと現れます。メスのくちばしは黒褐色ベースですが、先端付近だけがピンク色〜赤色に染まります。
■分布地域(日本・海外)
- 日本: 本来の渡りルートではない地域から飛来する、きわめて稀な「迷鳥」または「稀な冬鳥」です。本州、四国、九州、南西諸島などでわずかに数例の記録があるのみですが、滋賀県の琵琶湖や大阪府の一部などでは、近年ほぼ毎年特定の少数の個体が渡来して越冬する姿が確認され、野鳥ファンの注目を集めています。
- 海外: ヨーロッパ西部(地中海沿岸など)から中央アジア、中国北西部、モンゴルにかけての温帯地域で広く繁殖します。冬になると、温暖な地中海沿岸、北アフリカ、中近東、ペルシャ湾、インド北部へと南下して大規模な群れを作り越冬します。
■生態・行動
ヨシなどの水生植物が周囲に密生する、比較的大きくて水深のある湖沼、貯水池、大きな河川、ため池などに生息します。カモ類の中では「潜水カモ」のグループに分類され、水中に完全に潜って水底の水草の根や種子、藻類などを食べるのが得意です。しかし、浅い場所では「水面採食カモ(マガモなど)」のように、水面にクチバシをつけて逆立ちをしながら水草を食べることも多く、潜水・水面の両方の採食スタイルを器用に使い分ける柔軟な生態を持っています。基本的には植物食傾向が強いですが、小さな貝類や水生昆虫などの小動物を口にすることもあります。
■その他の特筆すべき特徴
ユーラシア大陸の西側に分布の中心があるため、日本に自力でやってくる個体は非常に珍しく、見つかるとニュースやSNS等で大きな話題になります。また、ヨーロッパの都市公園や水鳥公園などでは昔から美しく鑑賞価値の高い鳥として広く飼育・放し飼いされており、それらの飼育個体がカゴ抜け(脱走)して野生化し、定着しているケースも多くあります。日本のカモの群れの中にオスの成鳥が1羽混ざるだけでも、その燃えるようなオレンジ色の頭と赤いクチバシは遠くからでも一目瞭然で目立つため、探鳥地でのスター的な存在となる鳥です。


