■基本情報
- 和名:キバシガラス(黄嘴烏)
- 英名:Alpine Chough(または Yellow-billed Chough)
- 学名:Pyrrhocorax graculus
- 分類:スズメ目カラス科ベニハシガラス属
■形態的特徴
- 色や大きさ:全長約37cm〜39cm。日本で見られる一般的なカラス(ハシブトガラスやハシボソガラス)と比べると一回り以上小さく、鳩をやや大きくしたスマートなサイズ感です。全身はツヤのある美しい光沢を帯びた純黒色の羽毛に包まれています。
- 鳴き声:カラス特有の「カーカー」という濁った声とは全く異なり、「ピィーヨ」「チィーオ」「キィー」といった、非常に高くて澄んだ小鳥のような声で鳴きます。群れで鳴き交わす声はメロディアスな口笛のようにも聞こえます。
- その他の特徴:最大の特徴は、緩やかに下向きにカーブした鮮やかな黄色いクチバシです。さらに足がサンゴのように真っ赤(または鮮やかなオレンジ色)をしており、クチバシの黄色・足の赤・体の黒というコントラストが非常に際立っています。
■分布地域(日本)
- 日本では基本的に見ることができない海外の鳥です。ヨーロッパ南部のアルプス山脈、ピレネー山脈、北アフリカ、中央アジア、ヒマラヤ山脈などのユーラシア大陸の高山地帯に広く分布しています。日本国内では、過去に数例しか記録がない極めて稀な「迷鳥」です。
- 注:2018年6月にスイス・アルプスにて撮影。
■生態・行動
- 超高地への驚異的な適応:標高の高い岩場や高山草原、断崖絶壁を主な生息地としています。鳥類の中でも特に高い場所で暮らす種として有名で、標高6,500m以上の超高地で営巣・繁殖することが知られています。エベレストの標高8,000mを超える極限の環境でも目撃例があり、薄い大気に完全に適応しています。
- アクロバティックな飛行:高山特有の強い上昇気流を巧みに利用し、険しい谷間や絶壁の間を急降下したり、ひらひらと宙返りをしたりしながら群れでダイナミックに飛び回る、極めて高い飛行テクニックを持っています。
- 食性と人間との距離感:夏場は高山植物の間にいるカブトムシやバッタなどの昆虫、カタツムリなどを捕食し、冬場は果実や種子を主食にします。また、非常に知能が高く人懐っこい性格で、観光客の集まるスキーリゾート、山頂の展望台、登山鉄道の駅などにも頻繁に姿を現し、人間が落としたパンくずや残飯を器用に拾って食べます。
■その他の特筆すべき特徴
- アルプス観光のマスコット:スイスやフランスのアルプス山脈(ユングフラウ、マッターホルン、ピラトゥス山など)を訪れるハイカーや観光客にとっては非常にお馴染みの鳥です。展望台の手すりや岩肌にちょこんととまり、人々からおやつをねだるようなユーモラスな仕草を見せるため、「アルプスのアイドル」として世界中の旅行者から愛されています。



